精神科産業医実務のQ&A~労務・法務のエキスパートに聞く~安全配慮・合理的配慮をめぐる産業医の役割と責任とは
講師 中山 篤 先生 (元三田労働基準監督署署長、労働者健康安全機構 産業保健アドバイザー、 東京産業保健総合支援センター相談員)
2019年4月から働き方関連法が施行となり、
労働安全衛生法や労働安全衛生規則も改正されました。
中でも私たちの産業医業務と関係の強いのが
◆産業医・産業保健体制の強化
が掲げられておりますので、そのことに関する情報をご案内いたします。
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働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます
特に留意すべき点をいくつか下記にお示ししたいと思います。
《産業医の独立性・中立性の強化》
・産業医は労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、
誠実にその職務を行わなければならない
・産業医は組織にとっては不利な意見も専門家として述べなければならないこともあるが
産業医の賃金は組織が支払っているという関係から、
遠慮して意見できないということがないよう、新安衛則第十三条第4項にて
「事業者は、産業医を解任したときには、遅滞なく、その旨及びその理由を
衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない」と不当解任の抑止をしています
《産業医の権限の具体化》
・事業者が産業医に与えるべき権限について、以下としている
新安衛則第十四条の四にて
事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること
労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集すること
労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において
労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること
・一方で、産業医は権限が与えられるからには、絶えず自己研鑽を行う努力義務も課されました
新安衛則第十四条第7項に
「産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び
能力の維持向上に努めなければならない」と明記されました
《健康相談の体制整備、健康情報の適正な取扱い》
・労働者が安心して産業医や保健師等に健康相談等を受けられるようにするためには、
健康に関する情報を事業場内でどのように取扱うべきか、
事業場内でそのルールの明確化・適正化を推進すること(新安衛法第十三条の三)
・産業医等の業務の内容の周知についても定められました
(新安衛法第百一条第二項、新安衛則第九十八の二第一項・第二項)
常時各作業場の見やすい場所に掲示し、備え付けること、等としています
⇒私も早速社内イントラ掲示板に載せるために作成しました
《ストレスチェックの医師面接指導に関すること》
・事業者は、産業医に対し下記の情報を提供しなければならない
・ストレスチェックに基づく面接指導実施後の既に講じた措置
又は講じようとする措置の内容に関する情報
・措置を講じない場合は、その旨、その理由に関する情報
⇒つまり、ストレスチェック面接指導後の産業医意見書は、
事業者は受け取るだけではなく、
事業者がどう動いたか、動かないならその理由を、
明確に産業医に示すことが義務づけられました。
⇒共同代表理事の渡辺洋一郎先生が
産業医をされている企業の情報をいただきました。
・今年から、産業医が提出する報告書・意見書の最後に、
事業者からの産業医への報告欄を設けた
・報告内容、報告者、報告日を記載してもらう
・この報告を確認したことを示す産業医の署名欄を設けた
とのことです。ご参考にしていただければと存じます。
日本精神科産業医協会・理事・広報担当
神田東クリニック 高野 知樹
基調講演
パネルディスカッション
パネリスト:佐久間大輔先生(弁護士)小山文彦先生(東邦大学)田中克俊先生(北里大学)
第1部 講演
テーマ:産業医業務の重点課題をめぐって~特に精神科医へ期待すること~
1.法務の立場から 講師:三柴 丈典先生(近畿大学教授)
・法律論者からみた産業医の今とこれから
・働き方改革実行計画を踏まえた今後の産業医・産業保健機能の強化について(報告)
第2部 ワークショップ
テーマ:産業医業務の重点課題をめぐって~最近の実務活動をふりかえる~
2.精神科産業医の立場から 講師:田中 和秀先生(ひつじクリニッック院長)
一般社団法人日本精神科産業医協会 平成30年度総会資料